レビー小体型認知症はさまざまな症状があります。
自律神経症状の一つである起立性低血圧(意識消失)は大けがや命を落とす危険性があるので注意が必要です。
そこで今回は、自律神経症状の中の起立性低血圧(意識消失)の状況や対応について、私の母の経験を基に書かせていただきました。
レビー小体型認知症の人を介護されている方に少しでも参考になれば幸いです。
看護師、ケアマネジャー、認知症ケア専門士の資格をもち総合病院や市役所(包括支援センター)に勤務経験あり。
6年前からレビー小体型認知症の実母の在宅介護を継続中。
仕事柄、認知症高齢者との関わりは多く、認知症に関して理解できているものと思っていたが、実際に実母が認知症になった時には、教科書道理にいかない現実に打ちひしがれる。
在宅介護が現在進行形の中の現在、認知症の家族を抱え悩み閉じこもるようにしている人々に少しでも手助けになる情報を発信していきたいと思います。
自律神経症状とは?
レビー小体型認知症は、脳の中にレビー小体という物質が見られますが、脳のほかにも心臓や食道のどの自律神経にもレビー小体があらわれます。
起立性低血圧やめまい意識消失、便秘頻尿といった排尿障害などの自律神経症状が見られるのはこのためと考えられます。
自律神経には、血管を収縮させ血圧や脈拍を上げる交感神経と血管を広げ血圧や脈拍を下げる副交感神経の2つがあり、シーソーのようにバランスをとりながら働いています。
そして私たちの意思でコントロールできないのが自律神経です。
レビー小体型認知症の自律神経症状は、レビー小体の影響により交感神経と副交感神経のバランスが悪くなりさまざまな不調が現れます。
自律神経をつかさどる交感神経と副交感神経のバランスが悪くなると、
・寝汗をかく
・倦怠感
・便秘
・動悸、胸痛、息苦しさ
・手足の冷えやしびれ
・トイレに行ってもまたすぐに行きたくなり尿の回数が増える(頻尿)
・起立時のふらつき立ちくらみ(起立性低血圧)
・起立性低血圧によって起こる意識消失(失神)や転倒
※起立性低血圧:立ち上がった際に急激に血圧が下がり脳への血流が減少する状態
などのさまざまな症状が現れ慢性的に続くこともあります。
起立性低血圧とは?
自律神経症状でよくみられるのが起立性低血圧です。
起立性低血圧は、起き上がったり立ち上がったりして時に急に血圧が下がり立ちくらみをおこし転倒や失神(意識消失)の危険性があります。
これは自律神経がうまく働かないために、心臓に十分な血液を送れないことが原因です。
さらに高齢者は筋力が衰えているため、より注意が必要です。
※起立性低血圧により転倒し意識がない時などは、救急搬送が必要です。
実際の起立性低血圧(意識消失)
ここでは起立性低血圧(意識消失)についてお伝えします。
私も母も数年前に、起立性低血圧(意識消失)が起きたのですが、その時の
・起こるまでの流れ
・その時に行なった対応
について実際に経験したことを紹介します。
実母が起立性低血圧(意識消失)になった時の様子
母に意識消失が起きたのは、二年前の冬で朝食後2時間した後に、尿意がありトイレに行った時のことです。
洋式トイレに座っていた母の頭が、前かがみになり体全体がぐったりしました。
母の名前を繰り返し呼んで顔を叩いてみても全く反応がありません。
トイレから母のベッドまでは近いので抱きかかえて横にしたのですが、顔面蒼白で舌を巻き込み無呼吸の状態でした。
直ぐに肩枕を入れ呼吸ができる体勢をとり、口の中に指を突っ込んで刺激すると息を吹き返しましたが、呼名してもまだ反応がありません。
そこで心臓よりも高くなるように両足を挙上しました。
その間3〜4分、もっと短かったかもしれませんが、急なことでビックリしました。
そのうちに意識が戻り目を開け、発語もありました。
手足の麻痺もなく、そこで少し安心した私は余裕が出てきたのでしょう、血圧を測ると90/40㎜Hℊで、意識のない時はもっと低かったのだと思いました。
その後も血圧が低い状態でしたが徐々に回復し活気はないものの日頃の母に戻り、翌日には全くいつもと変わりありませんでした。
それから3か月くらい後にやはり朝食後に2回目の意識消失がありましたが、前回ほどひどくはありませんでした。
私は一度経験していたので、座っていた椅子からソファーに寝かせて楽な体勢にして様子をみていると、自然に意識が戻ってきました。
血圧が低くやはり一過性の意識消失だったようです。
一回目に意識を消失して2、3日後にかかりつけ医に受診しその時の様子を話しました。
医師からは、自律神経症状の起立性低血圧と言われたのでした。
それ以降は意識をなくすことはなくなりましたが、私は母の2回の意識消失の経験から起立性低血圧をまねかないように、次のようなことを心がけて行っています。
起立性低血圧(意識消失)への対応
血圧のこまめな把握と管理
母は長年にわたり降圧剤を内服していたので、一日の血圧の変動を調べるために朝昼晩の3回血圧測定を行いました。
1か月の血圧測定の結果、医師から降圧剤の減量と内服の時間を朝食後から夕食後に変更の指示がありました。
その後も朝食後と降圧剤を内服する夕食後には必ず血圧測定を行い、血圧が低い時は横になりその後2時間くらいして再度血圧を測り、内服をさせるようにしています。
トイレの際の注意点
トイレでの排尿や排便の後は血圧が下がりやすいので立ち上がりに気をつけ、ゆっくり行動するように声掛けをしています。
トイレでの見守りや介助を行い、風呂場やトイレでは手すりや端をもって移動するように促しています。
睡眠・起床時の際の注意点
起床時はゆっくり起き上がるように、焦らさないようにしています。
ベッドや椅子から立ち上がる時には、足踏みをするように促しています。
脱水症は、血圧を低下させるため、水分補給を促しています。
冬場は血行促進のためにやわらかめの弾性ストッキングも試しましたが、母が拒否したので代替えとして腹巻を着用しています。
睡眠時は足枕をおき軽く両足を挙上しています。
このように出来る範囲内で、急な血圧の低下を引きまねかないように注意をはらっています。
まとめ
自律神経症状で起こる起立性低血圧(意識消失)を母で2度経験して思うことは、症状の程度によっては命の危険性もあるということです。
しかし、経験したことで対応もできます。
実際に2度目以降は、起立性低血圧(意識消失)は起きていません。
レビー小体型認知症の家族をもつ私たちは、さまざまな症状を経験することで対応を学習しているのです。
必要以上に恐れず、また不安に思わないで関わっていけたらと、そんな思いで毎日母と向き合っています。