家族が認知症だとわかった時、ある程度は予想していたとしても、当初は誰もが戸惑い不安になります。
「もしかしたら・・」と心配して緊張していた気持ちから、「やっぱり・・」と事実がはっきりしてもすぐには冷静に受け止められるものではありません。
この記事では家族が認知症だとわかった際に「まず、何をどう始めたらいいのか」「本人をどのように支えたらいいのか」など家族が行うべき行動を実体験もふまえて挙げていきます。
これから介護を始めようとされている家族の方に、少しでも参考になれば嬉しく思います。
看護師、ケアマネジャー、認知症ケア専門士の資格をもち総合病院や市役所(包括支援センター)に勤務経験あり。
6年前からレビー小体型認知症の実母の在宅介護を継続中。
仕事柄、認知症高齢者との関わりは多く、認知症に関して理解できているものと思っていたが、実際に実母が認知症になった時には、教科書道理にいかない現実に打ちひしがれる。
在宅介護が現在進行形の中の現在、認知症の家族を抱え悩み閉じこもるようにしている人々に少しでも手助けになる情報を発信していきたいと思います。
本人を支える態勢を家族で話し合う
認知症の人の介護は先が見えないと、よく言われますが、介護する家族にとっては、心理面でもかなりの負担がかかります。
だからといって、あまり深刻にならないようにしましょう。
この先、さまざまな状況にも対応できる態勢づくりを家族で話し合うことがとても重要です。
本人を支える態勢づくりの例としては、
・介護をするキーパーソンを決める(医師や介護サービスを利用する際の窓口など)
・本人のことをよくわかっている人がよいが、話し合うことが重要
・1人が介護を背負わない
・家族で負担を分かち合う
などが挙げられます。
症状が進行していくに連れ、キーパーソン1人が介護をすることは、精神的にも体力的にも支障をきたし、必ず破綻を招きます。
家族が皆で、負担を分かち合い、1人や家族だけでは、抱えきれない場合が増えてくることを予測して、介護サービスを利用して本人も家族も穏やか時間を過ごせるような環境づくりをしましょう。
介護認定がまだの人は、介護申請が必要になります。
かかりつけ医や地域包括支援センターなどに相談しましょう。
認定まで30日程度かかります。
なるべく早めの申請をお勧めします。
レビー小体型認知症について学ぶ
やみくもに、情熱と愛情だけでは、介護はうまくいきません。
レビー小体型認知症がどういう病気なのかを、よく知り取り組むことが大切です。
さまざまな症状に対して家族がともに向き合っていくコツと力を、得るための一番の近道だと言えるでしょう。
家族の対応が症状の進行に影響することを理解する
認知症は、周囲の環境や家族の接し方が大きく症状の進行に影響します。
感情的になって叱ったり、嘆いたり、逆に理詰めで説得しようとすると、症状を悪化させることになります。
対応のポイントは、
・認知症のさまざまな症状は、病気のせいだと理解する
・本人の不安やいら立ち、気持の乱れなどに寄り添う努力をする
・対応する前にひと呼吸おく
・プライドを傷つけないよう言い方に気をつける
・せかさず見守ってできないことを手伝う
・本人の言うことを否定しない
・スキンシップなどで愛情を示す
・適度な距離間をとる
などです。
介護は24時間365日続くものなのでお互いイライラしないようにするには、介護サービスの利用が必須と考えます。
レビー小体型認知症の症状の進み方
三大認知症と言われる「アルツハイマー型認知症」、「脳血管性認知症」、「レビー小体型認知症」。
中でも、レビー小体型認知症は進行が早いと言われていて、調子のよい時と悪い時を繰り返しながら進行していきます。
全経過は発症から10年未満とされています。
ただし、症状の進行は個人差が大きく、治療や介護によって進行を緩やかにできると考えられています。
進行する度合いは、おおまかに初期(軽度レベル)、中期(中等度レベル)、後期(重度レベル)にわけられます。
それによって現れる症状にも特徴があり、介護の方法も変わってきます。
レビー小体型認知症の介護はまずその症状を知ることがとても重要です。
レビー小体型認知症の初期症状
必要に応じた介護で生活は自立できる時期
自律神経症状
自律神経のバランスが崩れて、立ちくらみや発汗、頻尿(特に夜間)や便秘、動悸だるさなどの、さまざまな身体症状が現れます。
このようなさまざまな症状の訴えに、家族は困惑・混乱して振り回されないようにしましょう。
幻視、錯視
レビー小体型認知症の中でも最も特徴的な症状で、人や動物、虫などの実際にはないが繰り返し現れます。
それは、とてもリアルで、怖がったり、不安を感じて興奮することがあります。
また錯視といった症状も特徴的です。
人によっていろいろですが、壁や天井のシミ、影などが人の顔や動物に見えることがあります。
錯視の対象になるものなので、取り除くことができのであれば取り除いてあげたほうがよいでしょう。
本人には見えているので「そんなものはいない」と否定しないで、話を聞き、合わせてあげることによって落ち着つかれると思います。
運動機能障害「パーキンソン症状」
筋肉がこわばり、からだの動きが悪く動作が遅くなります。躓きやすいので、転倒しないように注意が必要です。
・室内で躓きやすいものを片づけ、杖などを利用しましょう。
・手すり、スロープ、滑り止め設置も検討しましょう。
(介護保険サービスに住宅改修あり)
・動きやすい身軽な服装をしましょう。
レム睡眠行動障害
夜、睡眠中に大きな声を寝言のように出しベッドから起き上がろうとして、手足をバタバタと動かすことがあります。
激しい時にはベッドから落ちることがあります。
そういった場合は混乱せず、以下のような点に注意して接してあげるようにしましょう。
・夢の中の出来事と現実の区別がつかない混乱状態の時がありますので、急に声をかけてビックリさせない
・無理に起こさず、しばらく様子を見たり部屋を明るくする
・ベッドから転倒しないようにベッド柵を設置し、柵でけがをしないようにクッションを置いてみる
うつ症状
活気がない、何かする気になれない、食欲がないなどの、うつ状態のような症状が、みられます。
「頑張れ、元気を出して」と本人の意思に反した声掛けはしないで、優しく見守る対応しましょう。
レビー小体型認知症の中期の症状
さまざまな場面で家族の介護が必要になる時期
認知機能の動揺
一日の中で数分~数時間ボーとする状態と、はっきりした状態とを繰り返すことがあります。
これは認知機能の動揺によるもので、しっかりしている時とボーとしている時の差が激しいのが特徴です。
そうなると認知機能の低下や周辺症状(BPSD)が目立つようになり、日常生活の中で目が離せない状態が続き介護を要する時間が多くなります。
・家族は周辺症状(BPSD)に振り回されないように心がけてください。
・介護保険サービスを利用されていない家族の方は、サービス利用の検討をケアマネジャーなどに相談されることお勧めします。
※周辺症状(BPSD):本人の行動や心理状態に特徴的に現れる症状
薬剤過敏
レビー小体型認知症は薬に対する過敏性が高く、副作用が出やすい特徴があります。
薬の種類を変更した時や、量が増えた時などに急激に症状が悪くなります。
・内服後の様子を観察し、悪化した時には、主治医に報告、相談をしましょう。
・本人の薬に対するクセを知り量を増やしたり減らしたり、中止したと薬の管理のコツをつかむとよいと思います。
レビー小体型認知症の後期の症状
日常生活のほとんどで介護が必要な時期
認知機能、運動機能、身体機能が低下し、意欲も低下、寝たきりに近い状態になります。
そのため日常のほとんどで介護が必要な状態になります。
自宅での介護が難しくなったら、施設入所の見当も必要になります。
家族で今後について、しっかりと話し合い認識を共有して決めましょう。
まとめ
私たちは認知症介護において必要以上に恐れ、強いストレスを感じてしまいます。
また、例え意欲的に介護に取り組んだとしても、1人やひと家族の対応だけでは手に負えるものではありません。
認知症介護は本人と家族が共に暮らすために、どのように向き合えばよいのかをよく知り、さまざまな症状に対してのコツ(知恵)と力(経験)を得ることに尽きるのではないでしょうか。
症状が進行していくにつれ、マンパワーも必要となります。
在宅サービスを上手に利用し、かかりつけ医、ケアマネジャー、介護スタッフに協力してもらいながら介護を行っていきましょう。
家族が認知症になっても人としての尊厳を大切にし、介護する人の心や身体が壊れないようにすることを心がけてください。