レビー小体型認知症の特徴でもあるレム睡眠行動障害は、夜間入眠時に大声での寝言でベッドから立ちあがろうとして転倒や転落することがあります。
毎晩のように続くと家族は不眠に悩まされます。
そこで今回は、本人の転倒を防ぐ方法や家族が不眠にならないための対応について書かせていただきました。
私の母の経験を基していますので、レビー小体型認知症の人の介護をされている方に少しでも参考になれば幸いです。
看護師、ケアマネジャー、認知症ケア専門士の資格をもち総合病院や市役所(包括支援センター)に勤務経験あり。
6年前からレビー小体型認知症の実母の在宅介護を継続中。
仕事柄、認知症高齢者との関わりは多く、認知症に関して理解できているものと思っていたが、実際に実母が認知症になった時には、教科書道理にいかない現実に打ちひしがれる。
在宅介護が現在進行形の中の現在、認知症の家族を抱え悩み閉じこもるようにしている人々に少しでも手助けになる情報を発信していきたいと思います。
レム睡眠とは?
睡眠は、その深さや状態からレム睡眠とノンレム睡眠に分けられます。
レム睡眠は脳が活動しているため、まぶたの下で眼球がキョロキョロ動きます。
レム睡眠は通常、手足の筋肉は弛緩(しかん)して力がはいらないようになっています。
しかしレム睡眠障害の場合は、うまく筋肉の動きが抑えられずに夢の通りに体を動かしてしまいます。
ノンレム睡眠は脳が休んでいる状態で眼球の動きはおだやかです。
レム睡眠障害とは?
レム睡眠障害は以下の症状が発生します。
・大声での寝言
・怒ったり、怖がったり、手足をバタバタさせて暴れる
・急に起き上がる
・暴れてベッドから転落する
・壁などにからだをぶつける
・そばに寝ている家族を殴ったり、蹴ったりする
・泣く
などの異常行動が夜中に起こるのですが、この時は悪夢を見ている場合がほとんどです。
例えば何かに襲われている夢を見ていると、大声で怒鳴ったり手足をバタバタ動かしたりします。
また寝言は誰にでもありますが、頻度が多く、繰り返されます。
寝起きに夢の続きの話をして現実と勘違いすることもあり、これもレム睡眠障害の症状になります。
実際のレム睡眠障害について
ここではレム睡眠障害について実母を基にお伝えします。
私の母は数年前からレム睡眠障害がよくみられます。
程度はその日によって違いがありますが、その時の
・レム睡眠障害の様子
・レム睡眠障害時の対応
について紹介します。
実母のレム睡眠障害の様子
母は昔から寝言を言う人でした。
そのためレビー小体型認知症になってからも特に気にはしませんでした。
しかし3年くらい前からでしょうか。
眠りが深い時には、軽くいびきを立てながら声を出し夢の中で会話をします。
何度も繰り返しますがそれ程長くなく5分程度です。
体動はなく零時以降にはほとんどレム睡眠障害は見られません。
眠りが浅い時には、繰り返し寝言で大声を出します。
布団をはがしてベッドから起き上がろうとします。
夢の中で亡くなった夫に「お父さんそっちは危ないよ」などと叫び夫を助けようと家の中を探しまわろうとします。
ある時には遠に亡くなった親が死んだ夢を見たのでしょう。
「お母さん、死んでから・・・愛おしいよ」とはっきりとした口調で言い、大声を出して泣きます。
そういう時にはしばらく興奮した状態が続きます。
ほとんど明け方まで寝ることはありません。
母の場合、手足をバタバタ動かすことはありませんが見た夢に合わせて行動します。
頭がぼーとし下肢の筋力が落ちている母が転倒しないように、私は一晩中つきあうようにしていす。
しかしそんな日が何日か続くと私の体力が持ちません。
時には母のベッドの下で私は寝込んでしまい母が私の上に転げ落ちたり、私につまずいて転倒したこともあります。
幸いに何事もなかったのですが二人とも不眠のために体調が悪くなっていきました。
母は不眠が続くと妄想や幻覚がひどく不穏が強くなり、介護をする私は心身ともに疲れ果てていきました。
このような状態にならないために、母の安全とお互い眠るため日頃から以下の4つのことを意識しています。
レム睡眠障害への対応
危険な行動がなければ見守る
・ベッドから転落したり外に出る行為がなければ見守る
・再び寝るまで待つ
・長く続く時には部屋を明るくする
・ラジオやテレビをつけて自然に目を覚ますようにする
このような点を注意しています。
急に体をゆするなどして起こすと、悪夢と現実が混同し興奮してしまうこともあるので注意が必要です。
睡眠の質を整える
・日中に嫌なことや興奮することがあると悪夢をみやすくなるので、日中は穏やかに過ごせるようにする
・夜間ぐっすり眠るために規則正しい生活を送る
・昼間、できるだけ身体を動かすことや日光を浴び昼夜のメリハリをつける
・昼間ベッドに横になっても寝ないように声かけをする
・布団やまくらを本人に合ったものにする
・清潔への援助を行って心地よい睡眠を促す(入浴、清拭、足浴など)
・室温や湿度を調節する
・発熱や脱水が不眠になりやすいので健康管理に気をつける
睡眠の質を整えると介護されている方だけなく、介護している方にも気持ちと体が楽になってくるので、とても重要なポイントになります。
事故防止策(ケガをしないよう寝室環境を整える)
・ベッドから落ちても大けがにならないように低床する
・ベッドの左側は壁につけて転落しないようにする
・セミダブルのベッドを使用しベッド上の体動に余裕を持たせ転落しないようにする
・転倒しないようにベッド周囲や通路の障害物をどけておく
・転落や転倒に対応するため母と同室に寝起きをする
ストレスの解消
・本人が穏やかに生活できるように気を配る
・気分転換を図る(美容院に行く、ショートステイの利用、歌をうたう)
・室内に花を飾る
・天候のいい時には縁側で外の風景を眺める
・出来る範囲で本人のペースで生活を送る
・はぐやマッサージなどでしっかりと愛情表現をする
・夜間さみしさや不安を口にした時には一緒に寝る
ショートステイは母にとっては環境が変わって刺激を得られる場所です。
一方、私にとっては休息できる唯一のもので、今はサービス利用が必須不可欠なものとなっています。)
薬物療法
私の母は気分安定薬として抗精神病薬のクエチアピン(セロクエル)12.5㎎と脳の活動を抑え眠りやすくしています。
それと一緒に睡眠障害などを改善する薬としてマイスリー錠5㎎を毎晩寝る前に服用します。
母と私の不眠が続く時にはクエチアピンを増やして25㎎にするなどし、できるだけ夜に眠れるように薬の量をコントロールしています。
その際は転倒しないように十分注意する必要があります。
クエチアピンを増量すると寝つきがよくても夜中にレム睡眠障害がひどい時もあります。
しかし、睡眠が一番大切になってくるので、それはそれで仕方ないと受けとめています。
症状を抑えるために薬は必要ですが、レビー小体型認知症は薬剤に過敏に反応するため(母も同様)基本的には少量で質の良い睡眠をとれるように心がけることが大切です。
あくまで薬が万能という固定観念を持たないようにし、上手く薬をコントロールするようにしてみてください。
まとめ
レビー小体型認知症の症状の中で家族が最もつらいと感じるものの一つは、レム睡眠障害ではないでしょうか。
さまざまな症状が病気のなすわざと理解し受け入れることができたとしても、夜間の大声での寝言や転倒や転落。
夢で見たことを現実に感じそれにそった確認行動は、本人は勿論介護する家族も大きな負担になります。
そんな介護が困難な状況を乗り越えていくためには、私たちには工夫(対応)とサポート(介護サービス)が必要になります。
無理をしない対応と介護サービスの利用により、認知症介護を継続して行ければと思っています。