「家族が何かおかしい」と認知症を疑った時、早期に専門医での検査を受けることが大切です。
診断がつくことでさまざまな症状に対する薬を用いて症状を和らげ、認知症の進行を緩やかにする治療にもつながります。
さらに適切な治療や介護は、本人のQOL(生活の質)を高めることになります。
そこで、知っておいていただきたい、レビー小体型認知症と診断されるまでの、検査の流れなどについて紹介したいと思います。
実体験をふまえて紹介したいと思いますので是非とも参考にしていただければ幸いです。
看護師、ケアマネジャー、認知症ケア専門士の資格をもち総合病院や市役所(包括支援センター)に勤務経験あり。
6年前からレビー小体型認知症の実母の在宅介護を継続中。
仕事柄、認知症高齢者との関わりは多く、認知症に関して理解できているものと思っていたが、実際に実母が認知症になった時には、教科書道理にいかない現実に打ちひしがれる。
在宅介護が現在進行形の中の現在、認知症の家族を抱え悩み閉じこもるようにしている人々に少しでも手助けになる情報を発信していきたいと思います。
どのような検査が病気の診断に必要か?
認知症の検査の流れ
問診
本人や家族に対しての問診からスタートします。
認知症の専門医による診察は診察室に入った瞬間からはじまり、本人が入室する動作や歩き方、挨拶の仕方など、細かく観察されます。
医師は本人の状態とは別に、普段の様子の聞き取りをされますが、本人がうまく伝えられないことがよくあります。
そのため家族は
・いつごろ
・どんな状況で
・どんな症状が現れたか
・困っている症状
などを、出来るだけ具体的にメモして伝えることで、医師は問診がスムーズに進み正確な情報を得ることができ、診断に役立ちます。
レビー小体型認知症の問診は、特徴的な症状、行動の有無を重点的に調べます。
その後、必要に応じて認知機能検査や画像検査がおこなわれます。
問診内容の例
※日常生活の中でこんなことはありますか?
・調子のいい時と悪い時の差は激しいですか?
・普段できていることができなくなることがありますか?
・普段はわかっていることが分からなくなることがありますか?
・普段よりぼっとしていることがありますか?
・普段より気が散りやすくなることがありますか?
※それらの状態はどのような時にみられますか?
・着替えがうまくできないことがある
・声をかけても反応が乏しいことがある
・普段と比べて落ち着きがない時がある
・つまずきやすかったり、危なっかしい行動をとったりすることがある
・普段より話が通じにくかったり、意味の分からないことをはなしたりすることがある
などが問診内容になります。
内科的検査
体温、脈拍、血圧、呼吸を調べ血液や尿の検査、必要に応じて心電図や胸部レントゲン撮影を実施し原因診断だけでなく、合併症の評価を含めておこないます。
神経心理学検査
さまざまな角度から症状が認知症のものかどうか、認知機能の低下の程度やその人の特有な症状をとらえることを目的とする知能検査をおこないます。
一般的な知能検査としては以下の検査が行われます。
・長谷川スケール
・MMSE検査(ミニメンタルステート検査)
・アルツハイマー病評価スケール(ADAS)
・ウエックスラー成人知能検査(WAIS-R)
・高齢者うつスケール(GDS)
以上の検査が行われ、必要に応じて組み合わせて検査をすることがあります。
検査の結果は客観的な評価として点数評価が行われ、その後の経過を見ていくうえで症状の改善、または悪化の指標となっており、その意味でも重要な検査です。
医師などの口頭質問で、指示された通りに動いたり、記憶力、計算力、見当識、言葉の理解力などの様子が調べられます。
レビー小体型認知症では、幻視、錯視といった症状が特徴となります。
特に、壁や天井のシミ、影などが、人の顔や動物に見えるようなパレイドリアと呼ばれる錯視がないかどうか、視覚を使う検査をします。
同時に時計を描写するなど、図形を描くことで空間認知力も調べられます。
注 見当識:現在の年月や時刻、自分がどこにいるかなどの基本的な状況を把握する能力。
注 空間認知力:物体の位置や方向、姿勢、大きさ、形状などを認識する力。
またレビー小体型認知症の発見方法の一つとして時計描写があります。
画像検査
画像検査は形態画像検査と機能画像検査の2種類あります。
形態画像検査では、CT画像やMRI検査で脳の形を映し出し、脳の萎縮や脳梗塞や脳出血の有無などを調べます。
レビー小体型認知症は他の認知症と違い、脳の萎縮や死滅が目立たないため、CTやMRI画像では判断できないことほとんどのようですがその他の認知症との鑑別に有用です。
撮影時間が30分以上と比較的長く、検査中は装置から大きな音が鳴り高齢の患者には大きな負担がかかります。
家族は、前もって本人に説明をして不安を和らげるといいでしょう。
認知症では、ダメージを受けた脳の神経や細胞がある部分は活動が低下し、流れている血液の量も少なくなります。
どの部位の血流が、どのくらい低下しているかを調べることで、どのタイプの認知症かを診断しようとするのが、SPECT(スペクト)(脳血流シンチグラフィー)による機能画像検査です。
またレビー小体型認知症では、脳の特定部位の糖質の代謝が低くなるため、糖質の代謝を調べるPET(ペット)検査による診断も行われています。
PETもSPECTも大掛かりな装置の中に入り30~40分じっとしていなければならないので、認知症の進んでいる人は受けるのが難しい検査です。
このように検査はさまざまな過程で、段階的に行なわれます。
すぐにどの種類の認知症かどうかの確定診断には時間がかかります。
しかし認知症は、ある日突然というものではなく、少しずつ健康な状態から進行していくものです。
親、夫や妻が「最近、何か様子がおかしい。認知症?」と感じる不安を、見逃さないで、できるだけ早く専門医に受診し、検査を受けることお勧めします。
早期に受診されることは、検査などによる本人の負担の軽減にもつながります。
検査を受けるためにはどうしたらいいの?
まず、かかりつけに病院やお医者さんに相談してください。
かかりつけ医がいない場合は地域包括支援センターに相談しましょう。
包括支援センターに相談すると認知症の認定医が、どこの病院にいるのか、色々な情報が得られます。
その他、地域の保健所、保健センター、認知症疾患医療センターも相談窓口になっています。
地域包括支援センターは認知症の相談窓口になっていますが、それだけでなく認知症予防に関わる情報も数多く提供しています。
介護している家族にとっても有益な情報基地として、知っておくと便利です。
どのように受診を勧めたらいいの?
早期発見・早期治療に受診が欠かせないのは言うまでもありません。
ところが、「なぜ、病院に行くことがあるの?」と受診を拒否する高齢者も多いようです。
一刻も早く病院へ連れていきたい、と焦りつつも「本人が嫌がるから・・・」と家族は受診をためらってしまいます。
この壁を取払い、病院に行くのを嫌がる本人をその気にさせるコツ(5つのポイント)を挙げておきましょう。
本人に受診を勧める5つのポイント
ポイント1
脅したり叱ったりは逆効果
説得できないからと、強い言葉で迫るのではなく、心配している気持ちを伝えましょう。
ポイント2
無理強いはしない
力ずくで病院に連れていくのではなく、本人が納得できる口実を考えましょう。
ポイント3
必ず予約を入れる
病院に着いてからの待ち時間をなるべく少なくすることは必須条件です。
ポイント4
受診の予定は直前に伝える
早くから言っておくよりも、直前に気軽に誘うほうがうまくいきます。
ポイント5
信頼する人が同伴する
本人の不安な気持ちに寄り添って安心して受診できる状況をつくりましょう。
まとめ
家族は「何かおかしい」と認知症を疑った時、早期に受診することを望みますが、本人は受診を拒否することがよくあります。
私の母もそうであったように、レビー小体型認知症は初期には認知機能の低下はほとんど見られず、本人に認知症の自覚がないことや、認知症と認めたくない気持ちが強いためと思われます。
家族は、本人の気持ちを十分理解し、できるだけ早く受診することに努めていただきたいと思います。