レビー小体型認知症は1990年の後半に知られるようになった比較的新しい病気です。
認知症の全体の20%を占めるといわれていますが、まだまだ病名も知らない人が多いのが現状です。
また初期の段階では記憶障害がみられないことも多く、ほかの病気と間違われることがあります。
そこで今回は、レビー小体型認知症の診断基準となる特徴的な症状や誤診となる病気を紹介します。
皆さんの家族の中にもレビー小体型認知症ではないかと疑問や不安をお持ちの方がおられると思います。
ぜひ参考にしていただければ幸いです。
看護師、ケアマネジャー、認知症ケア専門士の資格をもち総合病院や市役所(包括支援センター)に勤務経験あり。
6年前からレビー小体型認知症の実母の在宅介護を継続中。
仕事柄、認知症高齢者との関わりは多く、認知症に関して理解できているものと思っていたが、実際に実母が認知症になった時には、教科書道理にいかない現実に打ちひしがれる。
在宅介護が現在進行形の中の現在、認知症の家族を抱え悩み閉じこもるようにしている人々に少しでも手助けになる情報を発信していきたいと思います。
レビー小体型認知症はどのような病気?
レビー小体型認知症はレビー小体(シヌクレインと呼ばれるたんぱく質)が大脳皮質の広範囲に渡って広がり、脳の神経細胞の働きが低下していく病気です。
「なぜレビー小体が現れてしまうのか?」という点が一番気になるところですが原因については明確なことはわかっていません。
70~80歳代の高齢者に多く見られ、男性が女性の2倍とされています。
性格的に真面目で几帳面な人がかかりやすいといわれています。
レビー小体型認知症の特徴は?
ほかの認知症のようにもの忘れなどの記憶障害や、時間や場所、人の認識がうまくできなくなる見当識障害。
物事を計画だっておこなうことがうまくできなくなる実行機能障害などの症状は初期の段階ではみられることが少なく、レビー小体型認知症に特有の症状がみられます。
他の認知症と違い脳の萎縮や死滅が目立たないために画像診断で判断できにくいことで診断が遅れたり、見間違いも少なくありません。
またレビー小体型認知症の人は、薬物に対する過敏性が高い傾向に見られます。副作用が出やすかったり、通常の薬の量で効きすぎたり、症状が悪化したりすることがありますので服薬の開始や増量の際には十分に注意が必要です。
レビー小体型認知症の特徴的な症状は?
幻視
レビー小体型認知症の特徴的な症状で、実際にはないものが、本人にはありありと見えるようです。
人により見えるものは様々で虫や小動物、人などが多く暗い場所などを指し「あそこにいる」ととてもリアルなため、介護者にとっては、ストレスになりますが、問題にならないことが多いため否定しないで話を合わせてあげましょう。
妄想
アルツハイマー型認知症の妄想は物忘れを原因とした被害妄想がよく見られます。
レビー小体型認知症では幻視による見間違いから起こる思い違いによるもので、冬場であっても「部屋の隅から蚊が入って来て額を咬まれた」「部屋の隅に蛇がいて布団の中に入ってこようとしている」など様々の妄想がみられます。
こちらも幻視と同様に否定しないで、じっくり話を聞くことが大切です。
レム睡眠行動障害
睡眠中に悪夢で大きな声での寝言や奇声をあげる、怒る、怖がる、暴れるなどの行動がみられます。
レビー小体型認知症の最初の症状として現れたという人も少なくないため、レビー小体型認知症の診断基準の一つの目安となる症状といえるでしょう。
家族が同居している場合、このような症状に気が付いたならば、受診の際医師に伝えることで早期に診断に結びつくこともあるでしょう。
パーキンソン症状
・手足が震える(振戦)
・動きが遅くなる(無動)
・筋肉が固くなる(固縮)
・表情が乏しくなる
・小声でぼそぼそ話す
・前かがみの姿勢になる
・歩行障害や転倒しやすくなる
自律神経症状
自律神経のバランスが崩れることで起こる症状で、例をあげると以下のようなことが起こります。
・起立性低血圧による立ちくらみ、めまい
・寝汗(体温調節障害)
・頻尿、便秘
・動悸やだるさなどのさまざまな体の不調があります。
抑うつ状態
意欲や気力の低下が見られることでレビー小体型認知症の約5~6割の人にみられます。
特に初期に現れやすく「気分がふさぎ込む」「悲観的になる」「憂うつ状態」などが伴い、意欲や自発性が低下します。
認知機能の変動
時間や場所、周囲の状況に対する認識や会話をするときの理解力などが、日によってまたは、朝と昼とで、良い時と悪い時の差が目立ちます。
どんな病気と間違えられやすい?
「レビー小体」は脳だけでなく全身の神経細胞にできるためレビー小体病という全身病と考えられています。
そのために以下のような違う病気や違う認知症と間違われることがあります。
パーキンソン病
レビー小体型認知症の症状である振戦や固縮などの症状から診断されるようです。
うつ病
意欲低下や自発性が低下するために診断されます。
その他の精神疾患
幻視や幻聴などからくる異常な言動により診断されます。
アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症
認知機能の低下がみられるために診断されます。
このようにしてほかの病気と見間違えたことで適切な対応が遅れるだけでなく、時として病状の悪化を招くことがあります。
病状の悪化を招く例
・初期の幻視などによる言動
↓
・妄想とされ抗精神病薬を処方され内服します
↓
・薬物の過敏性から幻視などが悪化します
↓
・抗精神病薬を増量し処方され、ますます状態が悪化していきます
間違った診断で状態が悪化していくことは、本人にとってとても不幸なことですし、特に在宅で認知症の人を介護する家族は心身ともに負担が大きくなっていくことになるでしょう。
まとめ
レビー小体型認知症は「第2の認知症」と呼ばれていますが、「気づかれにくい」誤解、誤診されやすい認知症といえるでしょう。
おかしいなと思う症状もある一方で、元気がない、活気がなくぼっとしている、歩きが悪く転倒しやすくなったなどは、高齢になればありがちなことで、ついつい見逃してしまうことも少なくありません。
レビー小体型認知症の特徴的な症状を知り小さな変化も見逃さないことが、認知症の対応をしていく上で一番大切な事といえるでしょう。
家族や支援者は正しい知識を身につけ、適切なケアを行うことが大切です。