長年、進行が早く予後が悪いと言われてきたレビー小体型認知症ですが、薬物の過敏性に留意しながら適切な治療や対応によって進行を緩やかにすることがわかってきました。
そこで今回はレビー小体型認知症への適切な治療と対応について紹介したいと思います。
記事の中に実際の経験なども書かせていただいておりますので、少しでも参考になればと思います。
看護師、ケアマネジャー、認知症ケア専門士の資格をもち総合病院や市役所(包括支援センター)に勤務経験あり。
6年前からレビー小体型認知症の実母の在宅介護を継続中。
仕事柄、認知症高齢者との関わりは多く、認知症に関して理解できているものと思っていたが、実際に実母が認知症になった時には、教科書道理にいかない現実に打ちひしがれる。
在宅介護が現在進行形の中の現在、認知症の家族を抱え悩み閉じこもるようにしている人々に少しでも手助けになる情報を発信していきたいと思います。
レビー小体型認知症とは?
レビー小体型認知症はレビー小体(シヌクレインと呼ばれるたんぱく質)が大脳皮質の広範囲に渡って広がり、脳の神経細胞の働きが低下していく病気です。
・アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症とともに「三大認知症」といわれる
・70代~80代の男性に多い
・レビー小体(αシヌクレイン)という異常物質が脳幹、大脳皮質にできる
・1996年に確立された新しいタイプ
・これまでアルツハイマー型認知症と診断されていたことも少なくない
レビー小体型認知症になる方は、性格的に真面目で几帳面な人がかかりやすいといわれています。
レビー小体型認知症の主な症状とは?
脳の神経細胞の働きが低下させるのはレビー小体です。
「なぜレビー小体が現れてしまうのか?」という点が一番気になるところですが、原因については明確なことはわかっていません。
主な症状としては以下のようなものがあります。
・視覚、記憶などの認知機能障害
・実際にはないものが、ありありと見える幻視
・その時々による理解や感情の変化(認知機能の変動)
・運動機能の障害大声での寝言や行動など(レム睡眠行動障害)
・歩行が不安定になるパーキンソニズム
・薬剤への過敏性が高い
症状の進行の仕方
レビー小体型認知症の症状の現れ方には個人差があり、そのせいで気づきにくいという点もあります。
それでも初期・中期・後期では症状が違ってますので、ぜひ参考にされてみてください。
初期段階
記憶障害が軽くいことから、発見が遅れることがある。
中期段階
さまざまな身体症状が出て、進行が早くなる。
後期段階
歩行困難から寝たきり状態になることが多い。
レビー小体型認知症の治療方法
レビー小体型認知症の治療は薬によるものと、リハビリによるものがあります。
薬は概ね中核症状と周辺症状(BPSD)の2つの症状別によって分けられています。
中核症状と周辺症状(BPSD)
・脳の神経細胞がダメージを受けたことで現れる症状が、中核症状
・記憶や日時、場所を把握する能力、物事を計画し実行する能力などの認知機能に関わる障害
・中核症状が原因となって引き起こされる二次的な症状を周辺症状(BPSD)
・行動面と心理面の症状が現れる
・本人の性格や周囲の環境、人間関係などが深く関係して、個人差がある
中核症状に用いられる薬
中核症状に用いられる薬は以下のようなものがあります。
中核症状に対して、進行を遅らせる抗認知症薬のドネペジル(製品名=アリセプト)
抗認知症薬は4種類あるがレビー小体型認知症にはアリセプトのみ
周辺症状(BPSD)に用いられる薬
周辺症状(BPSD)に対して、向精神薬や漢方薬などが使われ、向精神薬には抗精神病薬と抗不安薬、脳循環・代謝改善薬があります。
抗精神病薬はおもに統合失調症の幻覚や妄想を抑える薬で、認知症の周辺症状にも効果があります。
薬剤に敏感なレビー小体型認知症にも効果があるとされる漢方薬の抑肝散がよく用いられています。
認知症は、本人と介護者の負担を軽減して生活の質を保つことを目的とし、薬の助けを借りているのが現状です。
薬に過敏なレビー小体型認知症は、薬を服用して興奮している状態を病気の症状のように思われがちですが実際は、薬の副作用だったことが後からわかることがよくあります。
レビー小体型認知症をよく学び症状を一通り知っていれば、すぐに気づきどんな薬に気を付ければよいかわかり冷静に対処でき、薬で悪化する悲劇を防ぐことができます。
リハビリテーション(行動療法)
脳を活性化させる療法としてリハビリテーション(行動療法)があります。
医学的に立証されるものでなくとも確実な成果が期待されます。
・昔の思い出話をするなど、家族で行う回想法
・本人がよく聴いていた懐かしい音楽を流す音楽療法
・ペットがいるだけでもセラピーになるアニマルセラピー
・五感を使うことで脳の活性化を図る芸術療法
・海馬の近くにある嗅覚神経を刺激するアロマセラピー
・作業療法は、手芸、園芸、料理、工芸品づくりなどの生活動作の訓練
・運動療法は、有酸素運動としての簡単な体操など
「いい治療になるから」と無理強いはせずやる気と興味がわくこと、何よりも本人が楽しんでできることを勧めてみましょう。
レビー小体型認知症の対応について
対応にあたるためにはまず認知症を理解することが最も大切です。
認知症のどれにも共通する特徴があり、本人を冷静に理解するための大きな手がかりを与えてくれます。
認知症を理解するための6つの特徴
特徴1
「物忘れ」にもクセがある
※新しいことが覚えにくい
※経験したことを丸ごと忘れている
※過去の記憶は残っている
特徴2
症状は最も身近な人に強く出る
特徴3
自分に不利なことは認めない
特徴4
意識がしっかりしているときもある
特徴5
1つのことにこだわると抜け出せない
特徴6
出来事の中身は忘れても感情は残る
進行に応じた対応のポイント
初期:必要に応じた対応で生活は自立できる
・自分で出来るように、見守りと声かけ、手助けをする
・事故にならないための工夫や気配りをする、声かけをする
・本人の不安を高めるような言葉遣いに気をつける
※例えば「こんなこともできないの」「え?忘れたの?」は×
・どんな場面でも慌てず、穏やかな口調で、落ち着いて対応する
・責めたり、叱ったりといった口調で追い詰めないようにする
中期:さまざまな場面で対応が必要になる
・周辺症状(BPSD)の行動障害がでないよう、不安をできるだけ抑える関わり方に注意する
・転倒などの室内事故に要注意
・薬の誤飲や異物の飲み込みなどに注意する
・認知症による本人の性格の変化や人格の変化を受け入れる
後期:日常のほとんどで介助が必要な状態
・日常の観察を怠らない
・体温、血圧、脈拍などのチェックをする
・感染症に気をつける
・便秘や脱水にならないように注意する
・床ずれに気をつける
認知症は周辺の環境や家族の接し方が大きく症状の進行に影響します。
ポイントは認知症のさまざまな症状は、病気のせいだと理解し本人の不安や苛立ち、気持ちの乱れなどに寄り添う努力をすることです。
レビー小体型認知症の対応例
対応例1
幻視はレビー小体型認知症の代表的な症状になります。
「そこに子供がいるや、虫がいる」と指差しながら言う。
本人には「見えているので」否定しない
「怖い」という気持を理解して安心するような声掛けが必要
「怖い」という気持ちを理解し安心した声掛けが必要
対応例2
睡眠中に突然、大騒ぎして暴れたり、大声をだしたりするレム睡眠行動障害があります。
レミ睡眠障害は一緒になって興奮しないようにしましょう。
「大丈夫だよ、ずっと一緒にいるから」などの優しい言葉をかけて安心させてあげることが一番です。
・夢だ、と否定して興奮させない
・不安な気持ちをくみ取り優しく対応、安心させる
まとめ
介護者の家族は、認知症になった本人が、これまでとはまるで別人になってしまったかのように感じ、嘆くことになるのですが、実は本人こそ自分でなくなるような恐怖の中で暮らしていることを忘れがちです。
また理性でなく感情が支配する世界に暮らしているということを忘れてはならないのです。
レビー小体型認知症は無知により悪化し、それが病気の症状のように誤解されています。
大切なことは、医師にお任せではなく、介護者である家族が、病気や認知症の人のクセをよく知りさまざまな症状に向き合っていくコツと知恵を得ることです。
そのことこそが、症状の進行を緩やかにする一番の薬といえるのでしょう。